店と仕事
焼き場の前で。火と煙と匂いが教えること
炭火で焼き鳥や鰻を焼くとき、焼き手は何を見ているのか。炭の火、脂が落ちて立つ煙、音と匂い。紀州備長炭で焼く和歌山市の持ち帰り専門店が、焼き場という場所について書きます。
- 公開
- 更新
- 執筆
- 有限会社 トリハル
焼き台の前に立つ人は、何を見ているのでしょうか。黙々と串を返す手つきの向こうには、目に見えにくいものがたくさんあります。炭の火の具合、立ち上る煙、脂が落ちる音、焼ける匂い。どれも、焼き上がりを知るための手がかりになると言われます。
和歌山市南大工町のトリハルは、焼き鳥と鰻を紀州備長炭で焼いている持ち帰り専門店です。ここでは、焼き場という場所について書いておきます。
炭の火を見る
備長炭は、火持ちがよく、温度が安定しやすい炭です。それでも、炭の量や並べ方、燃え具合によって、焼き台の上には熱の強いところと弱いところができます。
焼き手は、串や鰻をどこに置くかを、火の具合を見ながら決めていきます。同じ火の前でも、部位や大きさが違えば、置く場所も焼く時間も変わります。
煙を見る
炭火で焼いていると、肉や鰻から脂が落ちます。落ちた脂が炭に当たって、煙が上がる。この煙が、炭火焼きの香ばしさのもとになると言われます。
ただし、煙が上がりすぎてもいけません。脂が落ちすぎると炎が立ち、表面だけが焦げてしまいます。串を返す、位置を替える、少し火から離す。焼き場の仕事は、その調整の繰り返しです。
音と匂い
焼き場は、音の多い場所でもあります。脂が炭に落ちる音、串を返す音。焼き手は、目だけでなく耳でも、焼き台の上で起きていることを確かめていると言われます。
匂いも同じです。焼ける脂の匂い、タレの香ばしい匂い。焦げる手前で火から外すには、匂いの変わり目に気づけることが大切です。
タレにくぐらせて、また火に戻す
トリハルでは、鰻も焼き鳥も、タレを刷毛で塗るのではなく、鍋のタレに直接くぐらせて焼きます。くぐらせては火に戻し、また焼く。それを繰り返して仕上げます。
タレは、創業から継ぎ足してきた自家製の秘伝ダレです。鰻にも焼き鳥にも、同じタレを使っています。
毎日、同じ仕事を
焼き場の仕事は、毎日同じことの繰り返しに見えるかもしれません。けれども、炭の具合も、その日の気温や湿度も、毎日少しずつ違います。決まった時間で焼けるものではない、と言われるのはそのためです。
トリハルは明治創業で、120年以上、和歌山で商いを続けてきました。始まりは西ノ店で、いまは南大工町に店があります。店の歩みはトリハルについてにまとめています。
- #焼き場
- #職人
- #焼き鳥
- #鰻
- #火入れ