鰻のはなし
蒲焼とは何か。素焼きからタレまでの手順
うなぎの蒲焼がどうやってできるのか、素焼きからタレを重ねる工程までを順に説明します。白焼きとの違い、関東と関西で異なるとされる焼き方についても触れます。
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- 有限会社 トリハル
うなぎの蒲焼と言われて、たいていの方は照りのある茶色い一尾を思い浮かべると思います。ただ、それがどうやってできているのかとなると、あまり知られていません。開いて、焼いて、タレをつける。おおまかにはその通りなのですが、実際にはもう少し手数があります。
トリハルでは毎朝、店で鰻を捌いてから焼いています。ここでは、その順番に沿って蒲焼という料理を説明します。
蒲焼という呼び名について
蒲焼の語源にはいくつかの説があります。よく言われるのは、昔は鰻を開かずに丸のまま串に刺して焼いており、その姿が蒲(がま)の穂に似ていたから、というものです。ほかにも、香りが早く立つことから「香疾(かばや)き」と呼ばれた、といった説も伝わっています。
どれが正しいかを断定できる資料はありません。ただ、共通しているのは、開いて焼く今の形になるより前から、鰻を串に刺して焼く食べ方があったということです。
まず、開くところから
蒲焼をつくるには、当然ながら鰻を開かなければなりません。目打ちを打って動かないようにし、包丁を入れて腹から開き、中骨を外します。ここで出た中骨は、揚げると骨せんべいになります。
開き方には地域差があると言われます。一般に、関東は背開き、関西は腹開きが多いとされる説明をよく見かけます。トリハルは和歌山の店ですので、腹開きです。ただし店ごとの流儀もあるので、地域だけできれいに分かれるものでもありません。
素焼き — タレをつける前の工程
開いた鰻は、まずタレをつけずに焼きます。これを素焼きと呼びます。
素焼きの目的は二つあると言われます。ひとつは、余分な脂を落とすこと。鰻は脂の多い魚なので、いきなりタレをつけて焼くと、脂とタレが混ざって重たい仕上がりになりやすいのです。もうひとつは、身に火を通しておくことです。
炭火にかけると、脂が落ちて煙が上がります。その煙がまた鰻に当たって、香りをつけていきます。紀州備長炭のような白炭は火持ちがよく、じわりと中まで火を入れられるので、この工程に向いています。
この素焼きの段階で仕上げたものが、白焼きです。タレを使わないぶん、鰻そのものの脂と香りが前に出ます。わさび醤油や塩で召し上がる方が多い品です。
タレを重ねる
素焼きができたら、タレにくぐらせます。そして、また焼く。これを何度か繰り返します。
一度で仕上げないのには理由があります。タレは糖分を含むので、一度にたくさんつけて長く焼けば焦げます。くぐらせては焼き、をそのつど重ねる。これを繰り返すことで、焦がさずに層をつくることができます。あの照りは、一度につけた量ではなく、重ねた回数のぶんです。
タレの中身は店ごとに違います。トリハルでは、創業のころから継ぎ足してきた自家製の秘伝ダレを使っています。刷毛で塗るのではなく、鍋のタレに直接くぐらせて、また火に戻します。継ぎ足しのタレは、今日つくって明日出せるものではありません。
蒸すかどうか、という違い
蒲焼の作り方でよく話題になるのが、蒸す工程の有無です。
一般に、関東では素焼きのあとに蒸してからタレをつけて焼き、関西では蒸さずに焼き通す、と説明されます。蒸すとふっくら柔らかく、蒸さないと皮が香ばしくなる、とも言われます。
ただ、これも「そういう傾向がある」という話であって、地域で完全に分かれるわけではありません。店の考え方と、扱う鰻の大きさによっても変わります。
焼き上がってから
焼き上がった蒲焼は、時間が経つほど水分が抜けていきます。買ってすぐが、いちばんいい状態です。
少し時間が経ってしまったときは、温めすぎないことが要点になります。そのままオーブントースターか電子レンジで、温まる程度に。詳しくは持ち帰りのご案内にも書いています。
鰻に山椒を添えるのは、脂の多い魚に香りで輪郭をつけるためだと言われます。トリハルでは紀州の山椒の小袋を扱っていますので、ご入り用の方はお申し付けください。
蒲焼は、工程だけ並べれば単純です。開いて、焼いて、タレをつけて、また焼く。それだけのことを毎日繰り返すのが、鰻屋の仕事です。
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